藤井氏は、今後の舵取りの難しさを指摘する。

「新しい資本主義というのは、要は、反小泉(純一郎元首相)、反安倍なんです。しかしながら、コロナ禍やウクライナ戦争で世界的な物価高となってしまった。今から市場に介入しようとしても、ここ30年低成長が続いた日本経済を底上げするのは難しい。グローバリゼーションとIT化に乗り遅れたことが大きいが、それは岸田首相というより、小泉、安倍両元首相の責任です」

 漂流する「新しい資本主義」政策は、このままフェードアウトしてしまうのか。前出の加谷氏は、岸田政権が取り組むべき課題についてこう語る。

「実は安倍政権の時代から、日本がやるべきことは出そろっています。企業の透明性向上、年功序列の見直し、男女の賃金格差是正、女性の管理職登用など、海外でもそうしてきた流れがあり、一つずつ実行していけば間違いなく企業の業績は上がる。小手先の策に終始し、基本ができていないことが最大の問題です」

 日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏は、首相の看板政策の一つである「デジタル田園都市国家構想」に関して、次のように提言する。

「いま田舎の現場で起こっていることは、学校の廃校、鉄道の廃線、小児科医不足などです。給付金に何兆円もかけるくらいならば、こうした生活インフラを維持することにお金を回すべき。出生率の低い東京にいくらお金を投じても、人口減による日本の消滅は止められません。霞が関の役人は、ITゼネコンと土木ゼネコンにお金が入る仕組みを一生懸命つくることしか考えない。たとえ史上空前の規模の予算を組んでも、岸田さんがリーダーシップを取らない限り、何も変わりません」

 前出の政府関係者によれば、岸田首相は最近、「日本はなんでこんな貧乏な国になったのだろう」と周囲にこぼしたという。何とも心細い話だが、やるべきことは山積みだ。国民が尻をたたかなければ、日本は泥沼に沈みかねない。(本誌・村上新太郎)

週刊朝日  2022年4月22日号