「新しい資本主義実現会議」に出席する日本経団連の十倉会長(左から2人目)と連合の芳野会長(左端)
「新しい資本主義実現会議」に出席する日本経団連の十倉会長(左から2人目)と連合の芳野会長(左端)

 なぜ、こんな体たらくに陥っているのか。政府関係者は内情をこう語る。

「『新しい資本主義』は岸田首相が2020年の総裁選で菅義偉氏に敗れた後、捲土重来を期して最側近の木原誠二衆院議員が中心となり打ち出したもの。急ごしらえゆえに、看板倒れ感は否めない」

 財務官僚出身の木原氏は、岸田政権発足後に内閣官房副長官に就任。当選5回で閣僚経験もないが、現在も首相と頻繁に面会しており、実質的なブレーン役と言われる。

 その木原氏は昨年7月、自身のブログで「私は、昨年来、『新しい資本主義、人に優しい資本主義を作る』をテーマに政治活動をしています」と宣言し、「成長と分配の好循環」などをテーマに6回にわたり投稿した。

 これを元に岸田派若手や財務・経産官僚が練りあげたのが、後に岸田首相が昨年8月26日に総裁選に出馬する際の公約の元になった通称「木原ペーパー」。「新しい資本主義」の原型は、木原氏のブログだったというのだ。

 ただ、実際は木原氏が自由に改革の采配をふるえる状況ではないという。

「官邸では経産事務次官までやった嶋田隆首相首席秘書官がにらみを利かせている上、財務省主計局次長経験者の宇波弘貴氏、同省主計畑からきた中山光輝氏と、役人時代の先輩にあたる2人の首相秘書官との間合いにも相当気を使っていると聞く。木原氏は同省では証券局や国際局を歩んだ傍流ですからね。首相に重用されて岸田派内でも妬まれて浮いているというし、ストレスは尋常じゃないでしょう。コロナ禍の再燃やウクライナ戦争も重なって、余裕がないようです」(前出の政府関係者)

 細川、羽田政権と旧民主党政権で大蔵相や財務相を歴任した藤井裕久氏はこう語る。

「吉田茂元首相には大野伴睦元幹事長、鳩山一郎元首相には三木武吉元総務会長といった参謀がいましたが、木原氏はまだそこまでの存在ではないでしょう。岸田首相自身にも、安倍晋三元首相のような権力欲がない。この先、どう転ぶかはわからないですね」

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