ロシア軍に包囲され続けているウクライナの港町マリウポリ。住民5千人以上が死亡したとされる(Getty Images
ロシア軍に包囲され続けているウクライナの港町マリウポリ。住民5千人以上が死亡したとされる(Getty Images
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 ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、両国の停戦交渉が進められている。停戦に向けて進展に向かうか注目されるが、過去の停戦協議を振り返ると早期の実現の難しさが見えてきた。AERA 2022年4月18日号の記事から紹介する。

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 3月29日、トルコのエルドアン大統領が仲介しイスタンブールで開かれた5回目のロシアとウクライナの停戦協議で、ウクライナ側はNATO(北大西洋条約機構)加盟を断念し、代わりに関係諸国がウクライナの安全を保障する国際条約の枠組みを設けることを提案した。ウクライナの代表によれば、保障する国として国連安全保障理事会の常任理事国(米国、ロシア、中国、英国、フランス)のほか、ドイツ、トルコ、ポーランド、カナダ、イスラエル、アイルランドなどにも条約加盟を求めることが考えられているようだ。

 だが現在ウクライナと戦っており、将来も対立しそうなロシアがその国際条約に加盟して、ウクライナを守る集団的自衛権行使に同意するとは考えがたい。一方、ロシアが加盟せず、米国、英国、フランス、ドイツ、ポーランドなどNATO加盟国がウクライナの安全を保障する条約になるなら、ウクライナがNATOに加盟したのと同然だ。

早期の停戦は難しい

 NATO加盟には30カ国の全会一致の合意が必要だ。ウクライナ東部2州で親ロシア派との内戦が続いている中で同盟関係になり、巻き込まれては迷惑と、ウクライナのNATO加盟に難色を示す国もある。それよりは米国中心の有志連合のような「国際条約」を作り、それに入る方が簡単で軍事援助を受けやすくなるだろう。「NATO加盟を断念するからロシア軍は撤退しろ」との取引に当面ロシアが応じることは考えがたい。

 領土問題はさらに難しい。ウクライナは「ロシア軍の侵攻前の位置までの撤退、その後にウクライナの主権、領土の一体性確認」を要求するのは当然だ。ロシア系住民が圧倒的に多いクリミアについては15年かけて協議することを提案しているのは妥当な譲歩だろう。だがロシアはウクライナ東南部のドネツク、ルガンスクの2州にロシア系住民が作った人民共和国を承認しており、首都キーウ(キエフ)の攻略は諦めてもドネツク南方の港町マリウポリの占領を狙っている。苦戦しているとはいえ、負けたわけでもない。成果もなしに撤退すればロシアの敗北が確定し、軍事大国のカリスマが消滅するから東南部だけでも確保して休戦に持ち込み、面目を保とうとしている様子だ。

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