中国の習近平国家主席はロシアとの経済協力を維持しながら、ウクライナ危機については当面静観するとみられる(Getty Images)
中国の習近平国家主席はロシアとの経済協力を維持しながら、ウクライナ危機については当面静観するとみられる(Getty Images)

 日本では中国がロシアと同様、台湾に侵攻する「台湾有事」を語る人も少なくない。だが、ロシアは隣国の一部を分離独立させようとして侵攻しているのに対し、中国は一部の米国人が台湾の分離独立を支持する動きを警戒しているのだから話は逆だ。もし米国が台湾独立をはかって中国と衝突すれば、米国は今回のロシアと同じ立場になり、日本がそれに協力すればベラルーシの役を演じることになる。

台湾有事介入は不可能

 だが、日本は72年に田中角栄首相らが調印した日中共同声明で「中華人民共和国政府が中国唯一の合法的政府であることを承認」し、台湾が中国の領土の一部である、との中国の立場を「十分理解し尊重する」と誓約した。78年の日中平和友好条約でもその共同声明を再確認している。憲法98条は「条約、国際法規の誠実な遵守」を定めているから、“台湾有事”に介入することは法的に不可能だ。

 バイデン大統領は3月18日の習近平(シーチンピン)国家主席とのテレビ電話会談で「一つの中国政策を維持」し「台湾海峡の現状を変更しようとするいかなる動きにも反対」と表明、台湾独立を支持しない意思を示した。台湾行政府の昨年11月の世論調査でも現状維持を望む人は84.9%だ。ウクライナの戦争が飛び火して台湾有事にいたる公算はゼロに近いと思われる。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)

AERA 2022年4月18日号

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