キャッシュレス時代が進むなか、現金決済派もいる。首都圏でパートをする40代の女性は、金銭管理に自信が持てないため、現金決済を続けているという。周りの人には「電子マネーなどの利用者が多く、レジでの支払いがスムーズ」と話す一方で、「お年寄りが現金を数えて支払っていると、ものすごく時間がかかっている」ともいう。
ファイナンシャルプランナーの丸子いずみさんはキャッシュレス派。スマートフォンをかざすオンライン決済サービスのPayPayを主に利用する。「簡単に決済ができて記録が残るので、あとで確認できる」と便利に使っている。
それでも、財布には硬貨も入っているという。自転車を駐輪場に止めると、硬貨で支払わないと出せなくなるからだ。
キャッシュレスになると、お釣りを計算しなくてよくなる。便利だが、頭を使わなくなる。丸子さんが子育てをしてきたときは、子どもにはお釣りはいくらか計算させていたそうだ。いわゆる「脳トレ」だ。
ファイナンシャルプランナーとして、生活困窮者の支援もする丸子さんは、「生活困窮者は、クレジットカードでたくさん買って、返済できなくなっている」という。そんな人たちを支援しながら見ていて、「ほしいのは一瞬」で、その誘惑に「クレジットカードの存在が大きい」と指摘する。
硬貨には賽銭や募金などで、まだ役割がある。現金決済は金銭感覚を保つのに意味がある。お釣りの計算は頭の訓練にもなる。しかし、キャッシュレス社会は確実に進み、硬貨の出番はますます減っている。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2022年4月22日号