シリーズ「100年企業」探訪。今回は「ぬれ煎餅を買ってください。電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」との悲痛な訴えで、なんとか息を吹き返したが、依然経営が苦しいローカル鉄道「銚子電鉄」をルポ。
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東京駅から特急しおさい1号に乗り、終点の銚子駅に向かう。
今回探訪する100年企業は、銚子電気鉄道(千葉県銚子市)。1922年に銚子鉄道株式会社として設立。翌年7月に銚子─外川を結ぶ鉄道の運行を開始した。
副業として始めたぬれ煎餅が大ヒットし、「今は鉄道の売り上げは6千万~7千万円。食品事業は5億5千万円です」(広報担当・鈴木一成さん)というから、失礼ながら煎餅会社が電車を走らせている状況ともいえる。
しかし先ごろ亡くなった鉄道ミステリーの巨匠、西村京太郎氏が『銚子電鉄六・四キロの追跡』(2010年)を著すなど、鉄道ファンの間ではその存在感は大きい。
さて、JR銚子駅の1番線に到着した。ここからどう乗り換えればいいのか? 西村氏がちゃんと記している。
<銚子駅に着き、観光客らしい一団が、2、3番線ホーム先端に向かって歩いていくので、それについていくと、なるほど、ホームの先端のほうに、書き割りのような風車のある小さな駅舎が見えた>
その記述どおりに跨線橋を渡って2、3番ホームに降り立つも、それらしきものは見えない。というのも銚電の駅舎は、そこからホームを100mもテクテク歩かないといけないからだ。
たしかにホームの端に駅舎は立っていた。
だが風車はない。
腑に落ちぬまま2両編成の電車に乗った。
やがて車掌が車内を回り始めた。銚電ではSuicaが使えない。そのため車掌が切符を販売するのだ。終点の外川までは片道350円。弧廻(こまわり)手形という一日乗車券が700円だという。もちろんそちらを購入。すると縦7.5cm、横19.1cmの厚手の券(二つ折り可)を渡された。