いよいよ出発。すぐ次の駅に到着する。6.4kmに全10駅。駅間の平均は約700mしかない。そのため駅を発車するや、次の駅の案内アナウンスが始まる。
その駅名がとても奇妙なのだ。パールショップともえ仲ノ町、上り調子本調子京葉東和薬品本銚子、足腰元気☆緩消法海鹿島……。銚電は駅名愛称のネーミングライツを販売しているからだ。
ネーミングライツは車両にも。私が乗ったのは「金太郎ホーム大正ロマン電車」。窓枠や吊り革などをノスタルジックな仕様にしている。
あっという間に犬吠駅に到着。20人ほど乗っていたツアー客が降りていった。犬吠埼で絶景を楽しむのだろう。
銚電の公式YouTubeでは竹本勝紀社長が沿線グルメとして、犬吠駅前にある「島武水産」の寿司を紹介していた。そこで私は同店に。
竹本社長が中でも強く推していた伊達巻には驚かされた。薄く切った太巻きの周りを、巨大な玉子焼きが囲っているのだ。玉子焼きはフワフワトロトロで、まるでカステラかプリンのよう。
しかしこれを最初に食べたのは大失敗。たちまちおなかが膨れてしまった。釣きんめ鯛、シメサバ、ホウボウ、アブラボウズ。銚子の魚はうまいが、できればもっと空腹で食べたかった……。
犬吠駅の隣、終点の外川駅の駅舎横には、デハ801という引退した車両が置かれていた。この車両は、アニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」に登場する。聖地巡礼で訪れるファンも多いそうだ。
デハ801の隣には「『澪つくし』のロケ風景」という看板が立っていた。1985年に放送されたNHKの朝の連ドラ「澪つくし」に、外川駅と電車が何度も登場したからだ。おかげで観光客が増えたので、遊覧貨車を引っ張る澪つくし号という観光電車を走らせて大人気だったという。
さて広報・鈴木さんの話をじっくりと聞くべく、本社に向かった。
本社が隣接する仲ノ町駅は、古きよき木造の小さな駅舎だった。外壁には、大村崑のオロナミンCのホーロー広告が打ちつけられている。