ブチャやボロジャンカなどで民間人虐殺が相次いでいる。ロシア軍による残虐な行為は、国際法でどんな犯罪に該当するのだろうか。AERA 2022年4月25日号は、同志社大学の浅田正彦教授(国際法)に聞いた。
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ロシアのウクライナ侵攻による民間人犠牲者は、増える一方だ。ロシアが一時占領していた首都キーウ(キエフ)近郊のブチャでは、計403人(4月12日時点)の遺体が見つかったという。8日には東部クラマトルスクの駅への弾道ミサイル攻撃で57人が死亡。包囲戦が続く南東部の港湾都市マリウポリでは12日、市長が「2万1千人の民間人が殺された」と述べた。浅田正彦教授はこう指摘する。
「侵攻開始以来、国際法違反に該当しうるものが数多くあります。侵攻自体が自衛権行使の場合などを除き武力行使を禁じた国連憲章違反であり、非戦闘員や学校、病院、原子力発電所への攻撃などは、これらを禁じた1977年の『ジュネーブ諸条約追加議定書』に違反します」
「ブチャでの虐殺などを見ると、ロシア軍が民間人に対し故意に行っていたのは明らか。軍同士の攻撃の巻き添えで犠牲になったのとは違う。『戦争犯罪』認定の可能性が高まっていると思います」
■「戦争における犯罪」
ウクライナのゼレンスキー大統領も5日、「最も凶悪な戦争犯罪」と非難した。そもそも「戦争における犯罪」とは何か。個人の戦争犯罪などを検察官が訴追、審理を経て処罰する司法機関・国際刑事裁判所(ICC)では、その処罰対象を「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪」に限るとしている。
「98年に採択されたICC規程(設立条約)では、ICCが管轄権を持ち裁くことができる『最も重大な犯罪』として(1)集団殺害犯罪(ジェノサイド)(2)人道に対する犯罪(3)戦争犯罪(4)侵略犯罪の四つを挙げ、該当する行為を詳しく定めています」
「例えば『戦争犯罪』では、文民を故意に攻撃、学校や病院など軍事目標以外のものを故意に攻撃──など34の行為を明示しています。ロシア軍の多くの行為がこれらの範囲に入る。広範または組織的な住民の殺害や奴隷化、強制移送などを明示する『人道に対する犯罪』にも該当する可能性があります」