「あの、写真、いいですか?」「ネットに上げなければいいですよ」「……じゃあ、いいです(と去る)」
え?満々?ネットに上げる気満々だったの?ただ、「そんな勝手にネットに上げるなんて失礼なことするわけないのに!」と怒らせてしまったのかも、とも思いました。だとしたら悪いことをしました。ごめんなさい。
「あの、なんて名前ですか?」
あなたが先に名乗りたまえ。あるいは分かってから声を掛けたまえ。いや、もちろん、このお声掛けだって僕の商売からしたらありがたいことではあるのですが。
「桜金造さんですよね」
違います。
「佐藤二朗さんですよね。応援してます」
ありがとう。ただね、女子大生さん。自販機でジュースを買おうと500円玉を入れたら釣り銭がすべて10円玉で出てきて屈んで必死に数えている情けない体勢の時に話し掛けないで。でもありがとう。
「佐藤二朗さんですよね。応援してます」
ありがとう。着物を上品に着こなした京都美人さん。僕も佐藤二朗史上最もダンディーに「ありがとう」と答えました。すべてがパーフェクト。僕のズボンのチャックが全開だったことを除けば。
「佐藤二朗さんですよね。ガラケー持ってるから間違いないと思いました!」
うん。まあ、うん。
「やっぱり顔大きい!」
心で言え、心で。
とまあ、ほんの一部ではありますが、印象に残っているお声掛けをご紹介しましたが、何度も言うように、本当にありがたいことですし、プライベートだろうからあえて声を掛けないでいてくださる心遣いを感じることもあります。また、家族と一緒にいるからと目線だけで黙礼してくださる方もいらっしゃいました。こうした心遣いを感じる度に「もっと頑張ろう」という気持ちになったりします。
皆さまの声援にお応えするべく、ますます精進いたします。
仏ビームは出ませんが。
■佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。