個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、町の人の声援について。
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「あの、佐藤二朗さんですよね?」
「はい」
「応援してます」
「ありがとう」
大変にありがたいことですが、町で声を掛けられることがあります。冒頭でご紹介したのは、とてもスムーズに会話が運んだ例ですが、いつもこのように滑らかに会話が運ぶわけではありません。今日は僕が実際に経験した中から、印象に残っている町でのお声掛けをご紹介。
「仏ですよね」
これね、一時期は本当に多かったです。そしてありがたいことです。ありがたいことではあるんですが、わりと困ります。だって京王線のホームで大きな声で「仏ですよね!」と言われますとですね、周囲の皆さん、ギョッとするわけです。なんで仏が京王線のホームに!?となるわけです。それ以前に、実在!?仏、実在!?となるわけです。そして「はい、私は、仏です」と答えると、そこはかとなく、バチが当たりそうな気もするわけです。あと、コンビニで雑誌を買おうとレジの列に並んでる時に「仏ですよね」と言われましてもですね、「いや、お嬢さん、仏はレジに並んでアサヒ芸能を買わないと思うよ」と言いたくなるわけです。ジャージだったし。ジャージでアサヒ芸能を買うおじさんに「仏ですよね」と言われましても。あと、言っておきますね。出ません。いくら「出してください」と言われても、僕から仏ビームは出ませんから。普通の人間はビーム、出ません。普通じゃない人間からもビーム、出ません。
「よく見てるよ、クイズ番組。『100人の男』」
見てない。おそらくよくは見てない。見事にちょっとずつ違うし、なんなら全部違うし、そんな暑苦しい番組の司会は多分断る。
「佐藤二朗さんですよね?」「はい」「………」
いやないんかい。話すことないんかい。ただ確認されただけの私の立場は。しかし、まあ、話し掛けたはいいが何を喋っていいか分からない気持ちはなんとなく察しますが。ただ、察するのがちょっと怖くなるお声掛けもありました。