夫はしぶしぶ「うん、わかった」と言うけど、動く気配がない。いつやってくれるかわからなくてヤキモキするけど、催促しすぎて機嫌を損ねられると困る。
考えた末に「寝ている夫の耳元でささやく作戦」に出たこずえさん。「ソファ動かせー」と、毎日ささやき続けました。
待つこと数日、息子とこずえさんと夫がそろった日に「よしやろう」と夫が動き出します。ソファは部屋のサイドに、ローテーブルは夫の足置きにしかなっていないから処分。大空間が生まれ、息子たちはサッカーのリフティングをしたり、マッサージしあったりしはじめたそうです。
家族の雰囲気は、あきらかに変わっていきました。
「これはいる?あれはいる?って物をとおして話し、家具を一緒に動かすなかで会話が増えました。朝は未確認の息子のプリントを発見したりして、焦ってイライラしていたけど、片づくとそういったことも無く関係も良好です」
機能的な家になると、気持ちだけじゃなく生活も変わっていきました。
「パッとご飯が作れて、ダイニングテーブルにサッと出せる。こんな世界があったんだと。前は『リフォームしたい』が口癖で。キッチンもまだピカピカだし、収納が少ないと思っていたけど物が減ったら十分だとわかり、必要性がなくなりました」
もう一つ大きなことがありました。こずえさんはみんなに言わなかったけど、同時期に義理の母が病気で入院し、そのあと他界されたそうです。その時も片づけが味方になってくれたとか。
「あの乱れたキッチンで知らせを聞いていたら、かなり混乱していただろうと思います。突然のことだったけど冷静でいられました。お葬式では家に人を呼ぶこともできました」
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![足元にまで物があふれてしまっていたキッチンは輝きを取り戻した](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/7/6/270mw/img_761ea4da4caa76d5626bad0c2e16e5a314037.jpg)
そのほかにも、地震でお皿が落下し、片づけの大切さが染みる出来事がありました。
この春、上の子は無事に大学に進学して県外で一人暮らしをはじめたそうです。
「子どもには本当に申し訳ないことをしました。同じ失敗は繰り返さないようにと、一人暮らしのキッチンや収納はぜんぶ、使いやすいようにしてきました」
自分にこんなことができるんだと、びっくりしたとか。「二日坊主」と言われた過去がうそみたいです。片づけは何歳になってからでも遅くない、気づいた時がはじめどき。人生で片づけてこなかった、罪悪感でいっぱいであきらめてしまいそうな受講生さんに、私はいつも伝えています。
※AERAオンライン限定記事
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