「知床遊覧船」のホームページから
「知床遊覧船」のホームページから

 海上保安庁は、沈没した可能性がある船体の捜索を進めている。その場合、事故の詳細は沈没した船が引き上げられて判明すると見られる。他方で、船の出航前のメンテナンス不備や老朽化を指摘する声も出ている。

 報道によれば、地元業者や現地を訪れた観光客からは「船体に傷がついていた」という証言が出ている。また、カズワンは昨年5月にロープとの接触事故、6月には座礁事故を起こしていることも明らかになっている。

小型船舶登録原簿の情報 

 いったいこの船はどういった船だったのか。

 AERAdot.編集部では、カズワン船体の写真から判読できた船舶番号から、所有権の移転などを記した「小型船舶登録原簿」(原簿)を入手した。

 原簿を見ると、新規登録されたのは、この小型船舶登録制度の運用が始まった2002年4月になっている。制度開始と同時に登録された可能性が高く、それ以前の情報は確認できない。

 02年4月時点の所有者は岡山県で旅客船業を営むA社だった。その後、04年10月に大阪府の個人に所有権が移転。05年10月に、今回事故を起こした「有限会社知床遊覧船」に所有権が移転している。

 02年の登録時点では、船籍港は日生町(岡山県)、総トン数19トン、長さ11.86m、幅4.15m、深さ1.52mだった。所有権が移った05年には船籍港は斜里町(北海道)に変更。その後、15年に改造され、長さ12.14m、深さ1.62mに変更されている。

 さらに編集部では、02年4月以前のカズワンの就航状況を知るという男性(40代、広島県瀬戸田出身)に話を聞くことができた。瀬戸内海の旅客船に詳しいこの男性によると、「カズワンは、瀬戸内海を02年以前から航行していた船でほぼ間違いない」と言う。

 雑誌「旅客船 207号」(日本旅客船協会)に掲載された1998年10月時点の高速船艇就航状況を見ると、A社の船で、岡山県内の日生~牛窓を行き来する旅客船を確認することができた。総トン数は19トン、船質はFRPで同じだ。旅客定員は79名でこちらのほうがやや多いが、ほぼ同程度の大きさだ。

黄色マーカーがA社の船舶情報。雑誌「旅客船 207号」より
黄色マーカーがA社の船舶情報。雑誌「旅客船 207号」より
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