23日に北海道・知床半島の沖合で観光船が消息を絶った事故で27日、運航会社の社長が事故後初めて記者会見を開き、土下座で謝罪をした。会見では事故前の船舶の様子などに質問が集まった。AERAdot.編集部が入手した情報によると、消息を絶った船はかつて瀬戸内海を航行していた船とみられ、建造後37年経っている可能性が高いことがわかった。専門家からは「海域の特性にあわせて船は造られる」という指摘も出ている。
【写真】観光船「カズワン」が瀬戸内海を航行していたと見られる資料(2枚)
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「このたびはお騒がせして大変申し訳ございませんでした」
記者会見の冒頭で、「有限会社知床遊覧船」(北海道斜里町)の桂田精一社長が約10秒間にわたり土下座した。その後、事故にあった船の状況や船長とのやりとりなど事故までの経緯を説明した。記者からは「他の事業者から出航しないほうがいいと言われながら、なぜ出航を決めたのか」、「会社の安全管理規定はどうなっているのか」などと、事故の真相を明らかにしようと、厳しい質問が相次いだ。
事故にあった乗客乗員26人のうち、これまでに女児1人を含む11人の死亡が確認された(27日17時現在)。事故発生から4日たったいまでも「どうにか全員みつかってほしい」「非常に胸が痛む」といった声がSNS上で繰り返しあがっている。
事故にあった船は「有限会社知床遊覧船」が所有する観光船「KAZUI(カズワン)」だ。同社のホームページによると、定員は65名となっている。総トン数は19トンで、小型船舶に分類される。材質は「FRP(繊維強化プラスチック)と見られる」(海上保安庁担当者)という。
運行管理上の問題大きい
今回の事故の問題点はどこにあったのか。
九州大学の元客員教授で、造船工学や波の海洋工学に詳しい小林正典氏はこう指摘する。
「荒天が予想される中で運行させた会社側の判断が大きな問題です。遊覧船は大きな波の中を航行することを想定して、設計されていません。船が消息を絶ったとき、波の高さは3mにもなっていた。一般的な遊覧船であれば、通常運行できる波の高さは1m以下に設計されていると思います。設計条件が守られていれば、安全に航行できる。運行管理上の問題が極めて大きいでしょう」