午後5時前後には、小降りになり、いつのまにか雨はあがっていた。
平成の時代も地方公務などに同行していると、上皇さまがお出ましになる直前に雨があがる、といったことは何度かあった。
5時20分過ぎ、上皇ご夫妻を乗せた車が赤坂御用地に到着した。
沿道からは「キャー」と喜びの悲鳴にも似た歓声があがる。赤坂への帰還に「おかえりなさい」とあたたかな声が飛び交った。上皇さまは笑顔で手を振り、美智子さまは開いた窓の縁に指をかけてほほ笑みながら何度も会釈をした。
おふたりを乗せた車は、赤坂御用地の正門にゆっくりと入っていった。上皇ご夫妻の「おかえり」を見届けた人びともほっとした様子で駅に向かって歩き出した。
雨のあがった道を歩く人びとの背中を、顔をのぞかせた夕日が照らしていた。
(AERAdot.編集部・永井貴子)