大のお笑い好きという藤井風
大のお笑い好きという藤井風
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 昔のテレビでは、今よりも音楽とお笑いの距離が近かった。人気の歌手やアイドルがコント番組やバラエティ番組に出るのは珍しいことではなく、芸人と一緒にコントを演じたり、さまざまな企画に挑戦したりしていた。バラエティ番組では歌のコーナーが設けられていて、アイドルなどが持ち歌を披露することもあった。

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 さらに言えば、芸人側も音楽に歩み寄っていた。芸人が歌手としてCDやレコードをリリースするのはよくあることだったし、とんねるずやダウンタウンも歌を歌うだけのコンサートを行って多くの観客を集めていた。国民的なテレビスターだったクレージーキャッツやザ・ドリフターズも、ミュージシャンと芸人の両方の要素を備えた存在だった。

 でも、そんな音楽と笑いの自然な融合というものが、最近のテレビではほとんど見られなくなってきた。音楽番組とお笑い番組は演者もスタッフもはっきり棲み分けされていて、交わることはめったになかった。

 そんな中で、4月23・30日深夜に放送された『藤井 風テレビ with シソンヌ・ヒコロヒー』(テレビ朝日)は、音楽と笑いの融合に真正面から取り組んだ意欲作だった。

 メインキャストを務めるのは、昨年末の『NHK紅白歌合戦』に出場したことでも話題になったミュージシャンの藤井風。大のお笑い好きだという彼が、シソンヌ、ヒコロヒーという当代きっての実力派芸人たちと共に、本格的なコントに挑戦した。

 ミュージシャンとしての藤井の魅力は、圧倒的な音楽的センスと豊かな表現力、浮世離れした端正な外見、ピュアで素朴なキャラクターである。『藤井風テレビ』では、そんな藤井の素材の良さをそのまま生かしたコントが並んでいた。

 二枚目の歌手にあえて三枚目の振る舞いをさせるという笑いの作り方ではなく、あくまでもミュージシャンとしてコントに参加してもらっているという感じが良かった。かと言って、過度に持ち上げることもなく、メンバーの一員として芸人と横並びのポジションにつかせていた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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