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 先日、ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんが亡くなりました。明るい芸風で、「お決まり」の笑いを届ける唯一無二の存在であり、多くの人を笑顔にした彼の死に、多くの人がショックを受けました。

【写真】上島竜兵さんが残した「山ねこ」のボトル

 私も、テレビを通して何度も目にした、彼の明るいキャラクターと芸風には元気をもらっていたため、大きな喪失感を味わっています。「直接会ったことがない人の死を悲しむのはナンセンスだ」という極端な意見もありますが、直接お会いしたことはなくても、メディアを通して何度も見たり笑ったり、感情を動かされた人が亡くなると、喪失感を抱くのも事実です。

 私には小学生と幼児の子供がいるため、見ず知らずの人でも、事故や災害やその他の理由で、幼い子供や小学生やご家族が亡くなるニュースにショックを受けます(自分の子と近い年頃のお子さんがなくなるニュースは、聞くのが辛いという親御さんが多いかと思います)。そのくらい、人の死の報道はインパクトが大きく、芸能人や有名人となると、心的ショックを受ける人々が多いです。とても影響力があるニュースといえます。そのため、メディアは特に人の死を報道するときは慎重に行うべきです。

 上島さんの死因は定かではありませんが、メディアによる自殺報道が、自殺者数の増加を招くことは、ウェルテル効果と呼ばれ社会学的に実証されています。このことを鑑みて、WHO(世界保健機関)は死因や方法や場所の特定をしないことなど、報道姿勢のガイドラインを設けており、厚生労働省も注意喚起をしています。

 YouTubeでも、自傷行為や自殺を扱う動画はデリケートなコンテンツとなり、視聴者に連鎖反応が起きるような動画を作ってはいけないというガイドラインがあります。このようにメディアに対する規制やルールが存在しているにもかかわらず、メディアの中には、上島さんの自宅の前から中継をした番組もありました。出演していた”尾木ママ”こと教育評論家の尾木直樹氏がメディアの報道姿勢について疑問を呈したことは、本当に良かったと思います。今回の件は、テレビやYouTubeなどのSNSも含めて、大々的な報道や発言が受け手にどのように影響するかの責任を再認識するきっかけでもあると思います。

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