キャンプからの作業もそうだ。例えばけん制球。私はわざとボークになるギリギリのラインを探り、審判員に「どこがボークなのか」「次のこの動作は?」などと確認した。キャンプで「それはボークではない」と言ってもらえれば、その形でシーズンに入っていけた。
メジャーリーグに行けば、必ず「移籍した投手」には洗礼がある。「メジャーリーグはこういうところだよ」と。人間である以上、「信念」のぶつかり合いが起きることを理解することだ。そのつどカッとしてしまうのか、この審判はこういう傾向があるのね、と次に向かって分析できるかで、心のゆとりも変わる。今回の一件は佐々木にとって良い教訓となるであろう。
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
※週刊朝日 2022年5月20日号