「大河への道」は5月20日(金)全国公開。志の輔さんは「梅さん」と藤枝梅安役で出演 (c)2022「大河への道」フィルムパートナーズ
「大河への道」は5月20日(金)全国公開。志の輔さんは「梅さん」と藤枝梅安役で出演 (c)2022「大河への道」フィルムパートナーズ

隠し続けた?伊能の死

志の輔:このテーマを落語にできた大きなポイントは、伊能が死んだのが1818年、日本地図の完成が21年という年表に書かれた事実を見つけたことなんです。3年の間、周囲が伊能の死を一生懸命隠したとしたら面白いな。そう思い、最後の江戸城のシーンまで一心に書いて、ひたすら落語をしてきました。

 映画もそうなったらいいなと思い試写を見たら、最後の江戸城のシーンで僕とは違う見事な形で終わっていた。泣けました。「こいつ、自分の原作でこんなに泣いてる」と思われたら恥ずかしいじゃないですか。わかっていたけど、だめでしたね。

森下:師匠とお目にかかった時、何稿目かの台本を読まれて、「パンとなってほしいのよ、パーンって」っておっしゃったんです。覚えてらっしゃいますか?

志の輔:僕が? 本当ですか?

森下:初めのシーンがね、どこかのシーンとパツンとつながってほしいのよって。

志の輔:パンで、パーンで、パツン?(笑)

森下:はい(笑)。それを聞いて、最初のシーンを変えました。市役所のシーンから、ゆっくりなだらかに入っていこうかと思っていたのですが、江戸から始めることにしました。

志の輔:まさかそれで、ああなったとは。あの最初の台詞、「では、今しばらく先生には、生きていていただきましょうか」はすごくシャープで、あれで一気に謎めきました。僕が描きたかったところからはずれず、幅が広がり、森下さんが盛り上げてくださったから、太い幹に花が咲いた。ものすごいサスペンス&コメディーのシネマになりました。

──落語から設定が変わったのが、大河ドラマ「伊能忠敬」の台本を執筆する脚本家。まだ実績のない若手だったのが、映画では大ベテラン(橋爪功)になった。

森下:伊能という人は、49歳で隠居し19歳年下の天文方・高橋至時(景保の父)に弟子入りしますよね。そして第1次測量に出たのが、55歳。人生100年時代と言われている今、伊能はその意味でスターじゃないかと思ったんです。地図という偉業はありますが、人生後半から新しいことを始めた。それも彼の人生のシンボルなのではないか、と。

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