
立川志の輔さんの新作落語「大河への道」が映画化された。脚本は大河ドラマ「おんな城主 直虎」も手がけた森下佳子さん。2人の語る「創作の道」は──。AERA2022年5月23日号の記事を紹介する。
【「大河への道」全国公開。志の輔さんは「梅さん」と藤枝梅安役で出演】
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──2006年、志の輔さんが千葉県香取市の「伊能忠敬記念館」を訪れたのが全ての始まりだ。
志の輔:落語会の帰り、小江戸の面影が残るという香取市の佐原に寄りました。伊能忠敬記念館に入ったのは、駐車場までの道の途中にあったからです。
入り口に、1821年にできた伊能図(大日本沿海輿地全図)が映る大型パネルがありました。そこに、衛星写真で撮った現在の地図が重なったんです。その瞬間、鳥肌が立ちました。こんなすごい地図を作った人のことをもっと伝えたい、落語にしようとすぐに決めたものの、四苦八苦しました。そもそも落語の登場人物は楽ーに生きてる人たちで、偉人を語るのには向いてない。11年に何とか完成させたら、中井貴一さんが「映画にしたい」とご連絡をくださって。
森下:中井さんが映画にしたがっている落語がある、台本を書かないかとプロデューサーに言われて、落語を拝見しました。すごく面白くて、「面白い落語と面白い役者、こんな美味しい仕事はないじゃないか!」と引き受けました。書き始めてからは、「面白い人と面白い人の企画を面白くできなかったらどうしよう?」というプレッシャーで、大変苦しみました(笑)。
志の輔:第1稿の台本を見た時、本当に驚きました。時代劇が少なくなっていくなか、江戸と現代を行き来する落語なら、若い人も映画ファンも見やすい映画になる。中井さんはそう考えてくれたのでしょう。でも、すべての登場人物が江戸と現代の一人二役になっているとは想像もしていませんでした。落語の概念には全くない作り方ですので。
全員江戸と現代の二役
──中井は「大河ドラマ推進プロジェクト」を任された香取市役所総務課主任・池本と、江戸幕府天文方・高橋景保を演じる。池本の部下(松山ケンイチ)も上司(北川景子)も、とにかく全員が江戸と現代の二役だ。
森下:江戸と現代を行き来する落語なのだから、あっちとこっちで一人二役、同数を立てて、両方の話を成立させていこう。制作陣で最初にそう決めました。落語では池本にチャラい部下がいるけれど、景保にはいない。じゃあ、作っちゃえと、そんなあんばいをしながら進めました。