■連合軍とドイツ軍の橋の奪い合い
同年6月には西側からも連合国側の反撃が始まった。「ノルマンディー上陸作戦」である。
「これはフランス北部のノルマンディー海岸への上陸作戦でしたが、ここにも川が関わっています。映画『史上最大の作戦』にも描かれていますが、最初に空挺部隊がパラシュートで降下して、上陸地点の両端と背後を流れる川の橋を確保したんです。上陸した連合軍はその橋を渡ってドイツ軍を撃破していきました」
映画「遠すぎた橋」で描かれたのは44年9月に行われた「マーケット・ガーデン作戦」だった。
「連合軍がドイツ国内に進撃する際、ライン川は別として、いちばん大きな障壁となったのがオランダの川や運河です。そこで空挺部隊を川の近くに降下させ、橋を確保し、その後に本隊がざぁーっと渡るという作戦を行った。しかし、この作戦は失敗に終わりました」
さらに石津さんは、映画「レマゲン鉄橋」を挙げた。
「後退するドイツ軍は連合軍がドイツに入ってこられないように国境付近を流れるライン川に架かる橋を次々と落としたんです。そしてドイツ軍撤収のために最後まで残されたのがレマゲン鉄橋でした。結局、ドイツ軍はさまざまな事情によってこの橋を破壊できず、連合軍に確保されてしまいます」
45年4月25日、西側から進撃するアメリカ軍と、東側からの旧ソ連軍がドイツ東部を流れるエルベ川で合流した。ベルリンが陥落したのはそのわずか1週間後だった。
■橋を死守できなければ爆破
このように戦争の歴史を振り返ってみても、侵攻する側にとっては、チョークポイント(敵を締め上げるポイント)である橋を押さえることが重要となってきた。そのため、本隊が無事に橋を渡れるように、進軍の前には必ず先遣部隊を出して偵察し、あわよくば橋の確保を目指す。
「先遣隊は、これまであった橋がいまも架かっているか、爆弾が仕掛けられていないか。敵兵がどう配置されているか、偵察します。もし、橋が爆破されていれば、修理できるか、あるいは、上流や下流に橋を架けられそうな場所があるかなど、すべてを調べます」