■雨の日の車いす登校に学校側の配慮 

 足が不自由な息子は、小学校低学年の時に両足の手術をし、しばらく車いすで過ごしていた時期がありました。学校は、雨の日は校舎に続く屋根のある通路まで車で入ることを認めて下さりました。

 でも、傘をさして登校して来る子どもたちの中に、車で入るのはとても危険です。雨の日はいつもよりかなり早くに家を出て、門が開くと同時に車を入れ、急いで車いすを出して息子を乗せ、校舎の入り口で車いすのタイヤを拭くと車を外へ動かし、安全な場所に止めてから再び息子のところへ戻るというバタバタをくり返していました。

 息子は一定期間でしたが、日々送迎が必要な車いすユーザーの子どもたちはたくさんいます。インクルーシブ教育とバリアフリーはセットのはずですが、雨の日の課題はまだまだあるようです。

■車いす用駐車場で残念なこと

 現在我が家は、医療的ケア児の長女のために、スロープが付いた福祉車両を使っています。

 スロープは車の後ろから出るため、病院などの駐車場では車を頭から入れることになります(バックで入れると、タイヤ止めにスロープが当たってしまうのです)。

 最近の車いす用の駐車スペースには、屋根があるところが多い印象ですが、駐車場全体を覆うようにできているところは少なく、さらに屋外の大きな駐車場では、車道部分にいくつかマンホールが設置されていて、スロープを出すとちょうどマンホール近くの水たまりに当たってしまうということがよくあります。

 雨の日は、長女に赤ちゃんの頃と変わらず頭からバスタオルをかぶせ、バギーでスロープを降りると走って屋根のあるところまで行きます。幸い、長女は顔に水がかかると「キャキャッ」と声を出して笑ってくれるので、今では開き直って、長女が多少ぬれても良いことにしています。

 そして10年前と比べると、街の中の環境が少しずつ、良い方向へ変化していることを実感しています。

■雨の日の外出を助けるアイテム

 さて。

 今回掲載した写真は、NPO法人の運営を手伝ってくれている、車いすユーザーの女の子が提供してくれたものです。「肩ブレラ」という名称で、傘の持ち手部分が曲がり、形を自由に変えることができます。

傘の持ち手部分が長くて曲げられるため、普通の傘だとうまくつかめない人にも使いやすい/林田光来さん提供
傘の持ち手部分が長くて曲げられるため、普通の傘だとうまくつかめない人にも使いやすい/林田光来さん提供

 本来はベビーカーを押したり、赤ちゃんを抱っこしたりする時にママの肩に巻きつけて使うようですが、片手が不自由な彼女が試行錯誤した結果、右手の前腕に巻きつけて、柄の部分を左肩に乗せると、車いすに乗った時にうまくバランスがとれて使いやすいと分かったそうです。さらに、傘と合わせてレインコートをひざ掛けのように置くと全身がぬれにくくなるとのこと。

 恐らく当事者の方は、私が想像するよりずっと、多くの努力と思考を重ねて日々生活しているのだと思います。

 雨の日の外出が少しでも楽になるようなアイテムが、どんどん開発されることを期待したいですね。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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