傘の持ち手部分が曲がり、形を自由に変えることができるアイデア商品。片手が不自由な車いすユーザーの外出も助けてくれる/林田光来さん提供
傘の持ち手部分が曲がり、形を自由に変えることができるアイデア商品。片手が不自由な車いすユーザーの外出も助けてくれる/林田光来さん提供
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「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか?  障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害を持つ子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出会った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

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■雨の日はどうやって移動するの?

 梅雨の時期が近づいてきました。我が家には身体が不自由な子どもが2人いるため、「雨の日はどうやって移動するの?」と聞かれることがあります。

 現在は子どもたちも大きくなり、困ることは少なくなりましたが、それでも必ず車で移動できる訳ではなく、ぬれるしかない場面もあります(笑)

 今回は、車いすユーザーの雨の日のおでかけについてです。

■子どもにバスタオルをかぶせ4往復

 我が家の子どもたち(双子の娘と弟)は年子のため、1~2歳頃の外出時には、双子用のベビーカーと抱っこひもを合わせて使っていました。

 未就園時期には「雨が降った日は外出しない」ことも可能でしたが、習い事や通園が始まると、朝夕の混み合う時間帯にも家を出なければならないことが増えました。

 当時住んでいたマンションは、エントランスから車道まで10m以上ありました。屋根が無かったので、雨の日はエントランスの中に置いたベビーカーからひとりずつ抱き上げ、頭からバスタオルをかぶせた状態で車まで走り、チャイルドシートに乗せました。これを3回繰り返してベビーカーを畳んで入れ、帰宅時には逆の手順で子どもたちをベビーカーに乗せるのは、ほぼ「作業」です(笑)

 私は子どもを抱っこするので傘は使えず、レインコートも運転する時には邪魔になり、脱ぎ着に時間がかかるため、結局毎回ぬれていました。

■エレベーターを使うたびに申し訳なく

 さらにこのマンションは、100世帯に対してエレベーターが2基しかなく、私たちが乗ると階下の方が乗れなくなり、とても肩身が狭かったものです。特に雨の日は、エレベーターを降りた人たちが駐車場から車を出すのもスムーズには行かず、駐車場でも時間がかかるのにエレベーターを待たせてしまうことを申し訳なく思っていました。この頃は、優しい管理人さんが、私が車を出して戻るまで子どもたちと一緒にいて下さるなど、周りの方にかなり助けて頂きながら生活をしていました。

 いつまでこの状態が続くのだろう…と思っていましたが、次女が歩けるようになり、双子用の大きなベビーカーが1人乗りのバギーに替わり、長女と次女がそれぞれ日中を幼稚園や通園施設で過ごすようになると、息子を抱いて気兼ねなくエレベーターが使えるようになりました。

 どのご家庭でもそうだと思いますが、思い返すと、子どもが未就園の頃が一番大変なのかもしれませんね。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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雨の日の車いす登校はいつもより早く出発