新型コロナ対策のマスク着用について、日本でも脱マスクへの動きが進みそうだ。20日、厚生労働省は新型コロナウイルス対策のマスク着用について、人との距離が2メートル以上あれば、屋内でも屋外でも、多くの場合はマスクを外せるとする基準を公表した。夏に向けてマスクを外せる機会が増えることは朗報だが、これに複雑な思いを抱く人たちもいる。さまざまな事情から「マスクを外せない人」の気持ちを取材した。
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「『マスク外したら、かわいくない』って、みんなからショック受けられたらどうしよう……」
最近、都内の男子大学生(21)は女友だちからこんな不安を打ち明けられた。「みんな」のなかには、気になる相手も含まれるのだろう。
「脱マスク」の流れが進むなか、これまでマスクで隠していた「顔」をさらすことに不安を覚えている様子だった。
男性は友だちの気持ちはよく分かると話す。
「僕も昔から、鼻と口の形にコンプレックスを持っていました。しゃべると片側の口角だけが上がってしまうので、人に見られるのがイヤでした。でも、コロナ禍でマスクを着用するようになったら、ちょうど口も鼻も隠せる。マスクのおかげで口元を見られなくて済むようになると、人と話すことが苦痛でなくなったんです」
彼の妹もいわゆる「出っ歯」。しかし、マスク生活に入ってから妹は、「生き生きとして、性格も明るくなった」(男性)というのだ。
また、この男性はアルバイト先の先輩である50代の女性にこう言われた経験がある。
「水を飲むから、見ないでね」
つまり、マスクを外した顔を見るなという意味だ。この心理について、都内に住む40代の会社員女性はこう代弁する。
「マスクは老けた印象を強めるあごのたるみや、ほうれい線を隠すことができるから便利なんです。何よりうれしいのは、高めの位置で装着すると、ちょうど、目の下のたるみを隠せることです」
コロナ禍以降、この女性はメークをサボりがちになったそうだが、以前より若く見られることが多くなったとうれしさを隠さない。さらにマスクをつけるメリットを強調する。
「マスクを装着することで目線の向く先が目立たなくなるので、苦手な上司や同僚と目を合わせなくても、不自然に思われないのもいいですよね」