佐藤綾子・ハリウッド大学教授が提唱する「表情トレーニング」
佐藤綾子・ハリウッド大学教授が提唱する「表情トレーニング」

 だがコロナ感染者が落ち着きつつある今、政府は戸外で会話の少ない場合にはマスクは不要との見解を示した。欧米やアジアなど、海外でも脱マスクへの動きは加速している。

 こうした状況のなか、「マスクを外せない人たち」はどうすればいいのか。 

 心理学者でコミュニケーションに詳しい佐藤綾子・ハリウッド大学教授はこうアドバイスをする。

「人間は初対面の相手に対して、顔から表情や造りなどの情報を読み取ることで、相手がどのような人物なのかを判断します。なので、マスクで顔の3分の1を隠してしまうよりは、本来は顔を出した方がお互いにコミュニケーションを取りやすいはずなのです」

 そうはいっても、マスクを外すと、顔のたるみや老化が気になる――そう尻ごみをする人も多いだろう。その場合は、表情筋を鍛えることで、脱マスクの恥ずかしさを克服することも可能だという。 

「人の顔で、もっとも動かしやすく豊かに表情を作ることができるのは、口周りの口輪筋です。マスク生活で顔の筋肉を動かさない生活が続いたことで、顔の筋肉がたるみ老け込むのは当たり前です」

 さらに「マスクで隠れるから」と動かさないでいると顔の筋肉が固まってしまうという。

「試しに、にっこりと笑ってみてください。コロナ前よりも、ぎこちない笑顔になっているはずです。この口輪筋を鍛えることで、筋肉に柔らかさが戻り、すてきな表情で笑うことができるはずです」

 では、マスクを外すと歯並びや自分の顔に自信がない人は、どうすればいいのか。

「マスク生活が続くうちに、歯科矯正やホワイトニングなどを試すのもいい。自信がつくならばそれもひとつの方法です。そこに予算をかけたくないひとは、『わたしは、歯並びは良くないけれど、笑顔はすてきよ』と、発想を切り替えるべくちょっとだけ努力するのもひとつの選択です。ただ、コミュニケーションの武器となる顔を隠してしまうのは、もったいないですよ」(佐藤教授)

 屋内でもマスク解禁となるまでには、まだ時間がかかるだろう。その間に、筋トレに励んだり、エステサロンに駆け込んだりするのもいいかもしれない。

 ただし、先の井上医師はこうも話す。 

「世の中の流れとしては、脱マスク歓迎でしょう。一方で、マスクを外すのに勇気が必要であったり、負担と感じる人もいます。そうした人は、無理をしないでもいいんですよ」

(AERA dot.編集部・永井貴子)