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 新型コロナウイルスとウクライナ侵攻の脅威に立ち向かうサンナ・マリン首相。そんな36歳の若きリーダーは、仕事と子育てを両立する一人の女性でもある。女性のキャリアを阻む「ガラスの天井」との闘い、自身の10年後について、AERAの単独インタビューで語った。AERA 2022年5月30日号の記事から。(全3回の3回目)

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──首相の座についたのは19年、34歳という若さだった。フィンランドでは史上最年少、女性としては3人目の首相だ。リーダーシップについて、国民から不安の声は出なかったのか。

マリン首相:私が首相になってから、二つの世界危機が起こりました。就任後数カ月で新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、そして現在のウクライナでの戦争です。この間、多くの試練がありました。でも、私はとても誇りにも思っています。私たちはコロナ禍に取り組み、ウクライナでの戦争に対処すると同時に、国内で多くの改革を進めてきたのです。 

 教育でも多くの改革をしましたし、ヘルスケアや社会保障改革も行いました。歴代の内閣も取り組もうとしましたが、私たちが成し遂げました。それからデジタル化やカーボンニュートラルなど新しい課題にも着手しています。持続可能な経済、社会、環境を作るために歩みを進めてきました。

──フィンランドは35年までにカーボンニュートラルを目指すことを表明している。同時に石炭由来の火力も使わなくする、という野心的な目標も掲げている。

フィンランドでは、若い首相が次々に改革を成し遂げている。そこには女性が突き当たる“ガラスの天井”があるとは思えない。そう尋ねると、意外な答えが返ってきた。

■仕事と家庭両立できる

マリン首相:ガラスの天井はいつでも社会に存在します。私たちは闘っているのです。たとえば、育児休業の改革について話しましたが、それもその一つです。子どもが小さいうちは依然として母親に大きな負担がかかります。父親がもっと育児に携わるべきだと思いましたし、それは義務ではなくて父親の権利でもあります。

 性別による賃金格差の問題もあります。女性のほうが男性より賃金が低いのです。解消すべく立法をしましたが、それが現実です。しかし、未来に向けて格差は解消し、ガラスの天井は日々破っていかねばなりません。

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