
■沼から抜け出せない
使われているクリームの半量がエシレバターという、とびきり上質な背徳スイーツ。バターが舌の上でとろける至福を一度でも味わったら、沼から抜け出せないことを、覚悟されたし。
バターの“親戚”といえる無脂肪乳を使ったユニークなバタースイーツも注目されている。栃木県那須町の銘菓、その名も「バターのいとこ」だ。
バターは牛乳から約4%しか採ることができない貴重品。残った無脂肪乳は、脱脂粉乳として安価に売られているという。とはいえ、無脂肪乳も地元の酪農家が愛情込めて作った牛乳の一部。その価値を高め、酪農家がバターを作り続けられるようにと生まれたのが、このお菓子だった。バターが香るワッフル生地の間に、無脂肪乳で作ったミルキーなジャムをたっぷり。アップサイクルの試みも注目され、今や那須を代表するお土産のひとつになった。
バタースイーツ人気のもうひとつの原動力といえるのは、あんバターの存在だ。
どんなあんこでも、どんなバターでも、二つの素材が出合えば、たちまち甘じょっぱな絶品に。スーパーの菓子パンから、フランスに本店があるブランドパン屋さんまで、いろんな場所であんバターのパンを見かけるようになった。
■1本いける悪魔の菓子
ずるい甘じょっぱと、背徳感のダブル仕立てで、これがまずいわけはない。

例えば、東京駅の東京ギフトパレットにある「岡田謹製あんバタ屋」の数量限定「あんバタロール」だ。午後2時からの販売開始にめがけた行列は、ギフトパレットのおなじみの風景に。そうして手に入れたそれは、甘じょっぱの塩梅(あんばい)が絶妙で、何なら1人で1本いけてしまう悪魔のお菓子となっている。

もうひとつ、スターバックスの店頭商品「あんバターサンド」も、近所で買える絶品あんバターパンとして、ネットで紹介している人が多い。コーヒーを買うときにガラスケースにふと目をやると、悪魔が手を振って勧めてくる。

すべて実食して、数千キロカロリーを摂取してしまった。とはいえ、何せおいしいので、長引くコロナストレスのはけ口にはぴったりだ。今年のスイーツ界のキーワードはこれで決まり。レッツ背徳!(ライター・福光恵)
※AERA 2022年5月30日号