この記事の写真をすべて見る 作家・画家の大宮エリーさんの新連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんだろうと考えます。2人目のゲストはシンガー・ソングライターの小沢健二さんです。
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大宮:最近東大に行ったりしますか。
小沢:結構行きますよ。
大宮:えー! 何をしに??
小沢:普通に三四郎池とか散歩して。
大宮:うそー! 小沢さんいたらびっくりしちゃうね。
小沢:いや全然余裕で。自分の世界に没頭している人がいっぱいなんで。
大宮:思索にふけっている人、結構いますよね。東大って、おおらかというか、図書館に赤いじゅうたんがあったり、やけに大きかったり、池や自然もあったりで、すごく……。
小沢:優雅!
大宮:そうそう、いいですよね。
小沢:ぜいたくな空間。だけど、そこに行ける人間を選ぶ判断基準が受験でいいのかと思います。もうちょっといい基準がないのかな。くじ引きじゃだめ?
大宮:今年、東大の門の前で受験生が切り付けられる事件がありました。「東大に受からないと人じゃない」と思う人もいるようで。なんでそうなっちゃうのかな。
小沢:その東大像は謎ですよね。社会が作っているよくわからない変な締め付けみたいなものの象徴として、「東大」という言葉があると思う。
大宮:東大がうんぬんじゃなくて、社会の締め付けがそこにある、と。
小沢:そうそう。東大はそのシンボルにされているだけであって、社会全体にギュッと押しつけられているものが、東大という一点からケチャップがビュッと出るみたいに出る、というか。
大宮:なんでそんなふうに追い込まれちゃう人がいるのか解せなかったけど、なるほど。その数値化された受験をくぐり抜けて東大に入ったけど、結局、小沢さんは数値化されない仕事をしてるわけじゃない?
小沢:めちゃめちゃ数値化できないね。エリーさんもそうでしょう。
大宮:そうなんですよ。もしかしたら私たち異色かもしれないね。