米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、米ツイッターの買収で合意して約1カ月。彼が突然、「買収は保留」だと言い出した。そもそもマスク氏はなぜ買収に動いたのか。AERA 2022年6月6日号の記事から紹介する。
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「スパムや偽アカウントが実際に5%未満かどうかの計算の詳細を待つため、ツイッターの買収は一時保留する」
米太平洋時間の5月13日午前2時44分、イーロン・マスク氏はそうツイートした。その後、時間外取引で、ツイッター株は急落。ツイートから約2時間後、「まだ買収には注力している」とつぶやいた。
マスク氏が問題視したのが、ツイッターが全利用者の「5%未満」と公表している、「スパム」と呼ばれる不正行為を行うアカウントの計算基準だ。
16日にはツイッターのパラグ・アグラワルCEOが「5%未満」の計算方法について連続ツイートで説明。公開できない個人データなどに基づいているため外部からはわからないとしながらも、社内の試算に自信を示した。
アグラワル氏の投稿に対し、マスク氏は「うんちマーク」の絵文字をツイート。「広告主は支払いの対価をどうやって知ることができるのか?」。翌日には「彼が根拠を示すまで、この合意は前に進められない」と明言した。
マスク氏はこれまでも、スパムや偽アカウントの撤廃を掲げている。だが、ツイッターはこれまでの公開情報でも「5%未満」と説明しており、合意後のこの段階で持ち出すのは「言いがかり」にもみえる。
ツイッターの買収総額は440億ドル(約5.6兆円)。米誌フォーブスの長者番付では、マスク氏の総資産は約2千億ドル(約26兆円)で世界一の富豪とされる。その彼といえども、総資産の5分の1ほどにのぼるツイッター買収は、安い買い物ではない。
だが株式取得が明らかになった4月初旬以降、テスラ株は4割近く下落している。テック株全般が売り浴びせられるなか、中国の新型コロナウイルス対策で供給網への影響が懸念されるほか、ツイッター買収によるテスラ株への影響も嫌気されているとみられる。