日本眼科学会がまとめた『オルソケラトロジーガイドライン』。黄色マーカーは編集部
日本眼科学会がまとめた『オルソケラトロジーガイドライン』。黄色マーカーは編集部

 日本では視力を回復させる治療法として承認されているが、近視進行抑制の治療法としては承認されていない。しかし、筑波大の研究では10年間以上の治療でも、近視進行の抑制効果があることがわかっている。17年に日本眼科学会がまとめた『オルソケラトロジーガイドライン』で、20歳未満の使用も容認しており、近視進行の抑制効果を期待して治療を受ける人も増えているのが現状だ。

 こちらも自由診療のため、治療費はまちまちだ。あるクリニックでは、適応検査で5千円(税込)、お試し装用で3万6千円、本治療に進む場合は5カ月間のレンズ代、検査、診療を含めて約10万円、6カ月目以降は3カ月おきに定期検査として3千円かかるとなっている。最初の一年はおよそ16万円かかる計算だ。

「オルソケラトロジーはアメリカやスペイン、香港でも子どもの近視進行の抑制効果があるという研究結果が出ています。数ある近視抑制法の中で最もエビデンスレベルが高い治療法です。オルソケラトロジーとアトロピン点眼を併用して療法することで、より効果があったという研究も出ています」(平岡医師)

 3つ目に注目を集めている治療法は、「多焦点ソフトコンタクトレンズ」だ。

 もともとは老視矯正のための遠近両用コンタクトレンズだが、子どもの近視進行を抑制することにも効果があるという研究結果が出ている。アメリカ、カナダ、イギリスなど承認されているが、日本では未承認で、販売されていない。

 日中に装着するため、ゴミなどが目に入ったりすれば、自分で外すことが必要となる。そのため、子どもが自分で取り外しができるようにならないと処方できない。通常は小学校高学年から使えるようになるという。しかし,小学校低学年でも自分で取り外しができる場合は、処方される。

「日本では新薬として承認されるまでに厳しい審査があるため、海外で有効性が認められても、日本ではなかなか利用できなという実態があります。近視抑制治療についても海外と比べると5年から10年程度遅れを取っているのが現状です。日本の子どもが治療を受ける機会を逃してしまっているという指摘もあります」(平岡医師)

 子どもの近視を進行させないためには大人の役割が不可欠だ。子どもの目を守るために予防と対策を心がけよう。

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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