ただし、この方法はいくつかのリスクがあります。例えば、裏で部長と通じていること(課長に無断で部長に相談したこと)が課長にバレる可能性があります。また部長が課長を重用している場合、こちらの思い通りに部長が動かない可能性もあります。「君の部下がこんなことを僕に言ってきたけど、君はどう思う?」などと部長が課長に尋ねれば、激怒した課長によりあなたが被害を受けることは火を見るより明らかです。したがって、あくまでこうした方法は常用・多用すべきでなく、正攻法が全く通じないときに、部長と課長の人間関係やあなたと部長との信頼関係などを注意深く調査した上で、実行に移すべきでしょう。なお、このような選択肢を常に取れるようにするためには、直接の上司である課長だけでなく、部長との関係も築いておくことが大切です。役員クラスや部長と関係を築く方法については前述しました。
(例)他部署の交渉相手(係長)をどうしても説得できないとき、交渉相手の上司(課長)に対して自分の所属部署の課長(上司)から依頼する。
ただしこの場合も、課長同士がいがみ合っているような場合には逆効果ですので良好な関係が築かれていることが前提ですし、頭ごなしに課長から指示を受けることになる交渉相手の係長もこうした空中戦を嫌がる場合もあります。
有効なケースとしては、交渉相手の係長は合意しているにもかかわらずその上司である課長を自力で説得できないという場合、こちらの課長から先方の課長に話をしてもらうことでスムーズに話が進むことがあります。
■「合同してプレッシャーをかける」方法
(例)社内でA課長のみが反対していて物事が進まないとき、会議の多数派工作を行う。
具体的には、A課長以外の全課長、あるいは特に関係が深い複数の課長に事前に根回しを行い、会議前に賛同を取り付けます。それだけではA課長が一歩も引かない性格であるならば、会議の綿密なシナリオを作成します。例えば口火を切る役割、賛同する役割、あえて反論する役割、反論をつぶす役割などを準備し、実質的な議論がなされたかのような雰囲気づくりを行うと効果的です。民主的な議論の機会が失われるため私はこのような方法は好きではありませんが、選択肢として持っておくべきです。