「人の視点や視覚の問題で不格好に見える場合もあるのです。それで必要であれば微妙にデフォルメし、完成後の“見た目”を重視しています」(前出のプラモ専門誌記者)。
箱絵にも注目したい。模型が映えるだけではなく、制作資料ともなるよう手書きイラストで描かれており、別名ボックスアートとも呼ばれる芸術作品だ。
タミヤの広報担当者は箱絵についてこう話す。
「例えば戦車。兵士を入れて書く場合、それがどこの国の戦車かによって兵士の軍装はもちろん、骨格や髪の毛の色、特徴を描き分けています。パソコンで描く方が効率は良いのでしょうけど、手書きにこだわるのはイラストならではの親しみやすさや味わいを大事にしたいからです」
完成後は、手に取って上下左右、好きな角度から眺め、機体が現役だったころに思いをはせる。
「He219ウーフーは大戦末期に登場してるので、写真はほとんど残っていません。プラモで再現することで初めて知る姿があり、タイムスリップしたかのように想像を巡らせられるのが醍醐(だいご)味ですね」(石坂さん)
身ぶり手ぶりで話す姿は、普段見る俳優とは別の顔だ。
ところで、プラモづくりが演劇に役立ったことはあるのだろうか?
「いや、ないです(笑)。ただ、気分転換には最適ですし、作品を一つ仕上げたときの達成感、誰かに見せて褒められる喜びは何ものにも代え難い。これを知ったらやめられませんね」
制作に当てるのは、もっぱら午前中。「特に細かい作業は、目が疲れてない時間帯がしやすいから」だ。
ルーペは必携。愛用するのはピンセットやニッパーにカッター、ノミ、筆、ヤスリ……。時には食卓のつまようじまで駆使する。はみ出た塗装を削るのは、知人に鉄板を切り出して作ってもらった0・5ミリの特注ノミ。工具にもこだわりがある。
「でも、そんなに難しく考えない方がいいです。とにかく何か一つ作ってみるのが大事。今はYouTubeに多くの方々が色々な制作方法をアップされてますから、それを参考にすれば意外と簡単にきれいに仕上がります。また、通いやすい場所にプラモクラブがあれば、仲間に入れてもらうのもいいでしょう。年齢・性別を問わず、マイペースで楽しめるのがプラモデル。決してオタクだけの世界ではないんです」