5日のフラワーデモでは、「時代に逆行する判決だ」という怒りの声が次々にあげられた。支援者によれば、苦しむ女性が刑事事件として告訴しようとした際に、「男性の将来を壊すことになる」と反対した友だちもいたという。被害女性の人生が中断することには無関心だが、男性の人生をかばうような行為こそ、性犯罪事件で「よく起きてしまう」二次被害でもある。

 セックスの同意について考える。

 あうんの呼吸とか、からだが反応したからとか、言葉なんていらないとか、空気を読みながらやっていくとか……それがセックス……と信じ込まされるような文化だとは思う。「キスしていい?」「もっと触っていい?」「下着を脱いでもいい?」「脱がしてもいい?」といちいち聞くと、セックスの楽しさが薄れるとでも思っている人も少なくない。ホテルに来たのだから同意は済んでるはずだ、下着に突然手を入れても何も言わないから同意は済んでるはずだ、性器から血は出たが気持ちいいと思ってるはずだ……などという「思い込み」の積み重ねで成立しているセックスを経験している人も少なくないのだろう。

 現に男性は、「今までは問題がなかった」と裁判で話していたという。それこそが、もしかしたら「訴えられなかった性暴力」であった可能性もあるのだが、男性には気づく機会はなかった。そしてそもそも、「同意」が何かを学ぶ機会のない社会で、若い裁判員たちに、原告となった女性の訴えを聞く力がなかった可能性もあるのかもしれない。

 傍聴した人たちも、男性の発言からは、自分の行為を性暴力だとは一切考えていないことが伝わったという。堂々と迷いなく記憶の隅々までを語る被告の言葉が「真実」となっていく間、どんな思いで原告になった女性が、「消したい」記憶と闘っていたのかと思うと苦しい。

 この事件、検察は控訴をしている。司法の問題だけではない。セックスにおける同意について、日本の文化や社会が問われているのだと思う。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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