ここで、「BTSとチョー・ヨンピルの違い」が重要になってくる。BTSは米音楽専門メディア「ビルボード」の最新チャートで何度も1位を獲得し、国連児童基金(ユニセフ)との提携事業も展開する世界的なスターだ。ところが、韓国でもARMY(アーミー)と呼ばれるBTSの熱狂的なファンは女性がほとんどだ。男性は中高年を中心に「BTSの名前しか知らない」という人がざらにいる。
前述した50代の知人男性は「BTSは兵役特例を受けられない」と断言する。
「兵役特例を受けるためには法改正が必要だ。法改正には多数の世論の支持が要る。BTSは(サッカーの英プレミアリーグで得点王になった)孫興(ソンフン)ミンのような国民的な支持を得ていない」
■出生率の低下も背景に
また、韓国は出生率の低下に悩んでいる。韓国統計庁によれば韓国の年間出生数で100万人を超えたのは1971年が最後。2021年の出生児はわずか、26万500人だった。韓国軍の現有総兵力は50万人を超える。韓国国防省の元高官はこう語る。
「低い出生率に加え、兵役期間もどんどん短くなっている。一人でも多くの男性に軍を支えてほしいのが本音だ」
もちろん、誰だって軍隊には行きたくない。だから「兵役逃れ」には、厳しい批判がついて回る。1997年12月の大統領選では、当選が有力視された保守系の李会昌(イフェチャン)候補が、2人の息子の兵役逃れ疑惑から失速。金大中(キムデジュン)氏に敗れたこともあった。芸能人も兵役逃れ疑惑が持ち上がれば、大幅なイメージダウンが避けられない。人気俳優のヒョンビンが2011年、海兵隊に入隊した際には、韓国内で称賛する声がわき上がった。
■20代男女の対立も深刻
そして、最も敏感な問題といえるのが、最近の韓国で深刻になっている男女対立だ。BTSは女性ファンが多い。男性のなかには「富も名声も手に入れたBTSがなぜ、さらに兵役特例まで受けるのか」(ソウル近郊に住む40代)という声がある。