「目の前に突如、どう攻略したらいいのかわからない巨大な山みたいなものが現れたときに、どう攻めていくか、どう自分のものにするか。向き合い方が大変であればあるほど、自分に返ってくるものは大きい、という実感があります」
昨年は、新作歌舞伎の舞台にも立った。挑戦を続けるうえで、刺激を受ける存在とはどのような人物か。そう尋ねると、情感あふれる答えが返ってきた。
「なんでも柔らかく受け止めてくれる先輩に憧れるときもあれば、ギラギラしている後輩を見て、『のんびりしている場合じゃないな』と思うこともある。逆に、ものすごく寡黙(かもく)だけれど、仕事は完璧にこなす照明部の方を見てかっこいいな、と感じることもあります」
成熟の時を迎えたその言葉は、一社会人として奮闘する私たちの心にも響いた。
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2022年6月13日号