ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「久慈暁子元フジテレビアナの結婚」について。
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元フジテレビアナウンサーの久慈暁子さんが、NBAで活躍する渡邊雄太選手と結婚したそうです。久慈さんと言えば、去年ぐらいから幾度となく「フジを辞める・辞めない」が話題になっており、その憶測に対する周囲や世間のざわつき方が「昔ながらの女子アナ感」満載で、どこか懐かしい気持ちで眺めてきました。
久慈さんとは2年ぐらい前に一度だけ仕事をしましたが、当時から「久慈! 久慈!」と騒いでいる男性陣は多く、初対面で「これが噂の久慈さんかぁ」と、まんま思ったことを本人に言ってしまった記憶があります。確かに聞きしに勝る器量を備えた方でした。
そして、かねてからの噂どおり、この4月にフジテレビを退社し、1カ月も経たない内に婚約発表。さらにはその翌日に結婚発表と、まさかの時間差連続シュートを決めてきた久慈さん。これでまた私の中で「久慈暁子」という女性が、さらに実感と実態のない現象になっていくこと間違いなしです。
しかし、この実感・実態のなさ加減が、極めて「女子アナ」っぽいなと感じるところでもあります。過去にも似たような事例があったと思うのですが、いかんせん実感と実態がないため、すぐに名前は思い出せません。特にNHKの美人女性アナウンサーやお天気おねえさんなどが、同様の文脈で語られていた印象があります。
ほとんどの場合が私の琴線に触れることはないとは言え、これも日本ならではのアイドルという「現象」のひとつなのだなと実感させられます。可憐で従順な女子が、大人の自我を帯び、実践していく様というのは、男にとっても女にとっても放っておけないものなのでしょう。器量の良い女子アナのフリー転身や結婚には、常にひと悶着が付き物。「ひと悶着」と言っても、それは往々にして世間の「いちゃもん」でしかないわけですが。