考えてみれば当然だ。30年の間、コストカットしか得意技がなかった経営者に「新しい事業を見つけ、挑戦せよ」と迫っても、その経験も知識もない。

 しかも自ら起業した創業経営者が少ない日本の大企業では社長が後輩を後継社長に選ぶことがまだ多い。先輩の経営路線をひっくり返すこともできず、大胆な経営刷新にも立ち向かえない。

 モノづくり現場の実証研究の第一人者、藤本隆宏・早稲田大学大学院教授は日本企業の特徴を「強い現場、弱い本社(経営陣)」と指摘する。逆に米国企業は「弱い現場、強い本社」という傾向があるという。

 日本企業の低迷は新しいビジネスモデルを構想し、実現させる力が足りない「弱い本社」のせいだと言えないか。日本の賃上げを実現するには「力量のない経営陣は去れ」とまずはいわねばならない。(経済ジャーナリスト・安井孝之)

AERA2022年6月13日号より
AERA2022年6月13日号より
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