2022年3月期決算で最高益を更新した上場企業は3割となった。決算発表資料を入れる企業の担当者=5月12日、東京証券取引所
2022年3月期決算で最高益を更新した上場企業は3割となった。決算発表資料を入れる企業の担当者=5月12日、東京証券取引所

 2022年3月期決算で最高益を更新した上場企業は3割に上った。「失われた30年」から抜け出せるかと思ったら、ウクライナ情勢などで先行きには暗雲が漂う。日本企業が賃上げを実現するには何が必要なのか。AERA 2022年6月13日号の記事から紹介する。

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 なぜ日本企業は「失われた30年」から決別できないのか。

 日本だけがデフレ経済に苦しみ、低成長に甘んじている。「日本の労働生産性は低下し、IT化も遅れている」などと現場で働く人たちに低成長の原因を転嫁する見方もある。それは正しいのだろうか。

 日本取締役協会の新会長に選ばれ、5月12日に記者会見した冨山和彦・経営共創基盤グループ会長は20年ほど前からダイエーやカネボウなど多くの企業再生に関わった。

 冨山氏は「新しい資本主義」が目指すものは企業の長期的な経営姿勢に環境や社会、企業統治への配慮を求めるESG投資の方向性に近いと指摘したうえで、日本企業の現状をこう話す。

「ESG投資は『ゆっくり走れ』と言っているのではないかと多くの日本企業が誤解しているように思う。グローバル企業は今、42.195キロのマラソンを環境や社会などに配慮しながら速く走れと厳しく言われて、2時間ほどで走っているのに、日本の多くの企業はこの30年間、マラソンを4時間、5時間かけてゆっくり走っている」

 つまり、日本企業がグローバル経済の変化に素早く対応できず、ぬるま湯の中で安穏としていることが、この30年間の低迷の原因だと冨山氏は喝破したのだ。

 日本企業はバブル崩壊以降、ずっと低金利なのに債務の最小化をひたすら進めた。この間、人員削減などのリストラに取り組んだものの資金調達をしながら新分野に挑戦することを躊躇(ちゅうちょ)した。

 企業が成長するにはリストラして余剰となった、おカネやヒトを新しい事業分野へと再配分して、新陳代謝しなければならない。しかし、日本の経営者の多くは再配分する新事業を見いだせず、身の丈を縮めたに過ぎない。

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安井孝之

安井孝之

1957年生まれ。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京、大阪の経済部で経済記事を書き、2005年に企業経営・経済政策担当の編集委員。17年に朝日新聞社を退職、Gemba Lab株式会社を設立。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。

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