西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、日本ハムの新庄剛志監督に期待を寄せる。
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新庄剛志監督率いる日本ハムは3、4月こそ出遅れたが、5月は12勝12敗の勝率5割で乗り切った。どこかでまた落ち込む時が来るかもしれないが、ベンチも含めて目がギラついている。その雰囲気がいい。
まったく先入観を持たずに選手を見て起用し、選手の特徴を将来性を含めて判断し、これからそのピースたちを組み合わせていくことになるのだろう。まだ選手の力量を見極め、注意し、育てる作業なのかもしれないが、新庄監督が何を求め、何を嫌うのかという根っこの部分を、選手が少しずつ感じ取れるようになってきたのではないかな。
若い選手は「失敗」すると消極的となり、また「ミス」が重なる。そんな負のスパイラルを最初から新庄監督は断ち切ろうとしてきた。ミスをした選手のミスを責めるのではなく、積極性をほめる。キャンプからシーズン序盤はそういったことが多かったように思う。
しかし5月25日の交流戦2戦目となったヤクルト戦。九回1死一、三塁から仕掛けた重盗で、捕手の二塁送球を見てからの三塁走者・清宮のスタートが遅く、本塁タッチアウト。「あんなミスをしていたら一生、上に上がっていけない。スタートが遅すぎる」と新庄監督は珍しく怒りのコメントを残した。
無理もない。この場面、同点の九回に2点を勝ち越し、「あわよくばもう1点」という場面。状況を考えれば、ギャンブル的にスタートを切ってしまうならともかく、大事に行く必要はまったくなかった。捕手のリリースの瞬間の角度でスタートを切るべきところを、投手の上を通過したあたりでスタートを切った。つまり、状況判断もできない、意図のまったく見えないミスに怒ったのだろう。
まったく実績のない選手を使う時に必要なのは、ミスの質を見極めることである。どのミスを怒り、逆に尾を引かせないか。何より選手の積極性を引き出し、能力を伸ばし続ける忍耐力と、指揮官の腹をくくった姿勢も問われる。