林:仲代さんにこの対談に出ていただいたとき、「無名塾」について伺いましたけど、広い稽古場のお掃除から始まるんですよね。

滝藤:電車組は始発に乗って朝5時半に来るんですけど、自転車組は朝5時からでしたから、僕、自転車で40分ぐらいかけて行ってましたね。あいさつから姿勢から言葉づかいから、厳しく育てられました。僕はこんなんですけど(笑)。

林:あの方は漫画界の手塚治虫さんとか、そんな感じですよね。レジェンド、神みたいな領域の方。

滝藤:そうですね。僕らは黒澤映画の影響を受けてますからね。

林:そうですよね。

滝藤:「俳優は普段から演じなさい」と常日頃からおっしゃってました。「芝居だからといって急にお上品にはなれない。普段からちゃんとした日本語をしゃべりなさい」とか、「人間として普段からちゃんと歩きなさい」とも言われてましたね。一歩歩くと「違う!」、ひと言発すると「聞こえない!」って毎日言われてました。

林:そのころ役所広司さんはもういなかったんですか。

滝藤:僕が入ったころにはもういらっしゃらなかったですね。1期生に隆大介さんがいらして、2期が役所さん、若村麻由美さんが9期。「花の9期」と言われてました。僕とか真木よう子さんは22期です。

林:でも仲代さん、滝藤さんに「君は40(歳)すぎたら売れる」とおっしゃったんでしょう?

滝藤:売れるというより、「40からが勝負だ」と言われてました。「だから40までは芝居を一生懸命勉強しなさい」と。

林:「無名塾」ではどのレベルの役がついてたんですか。

滝藤:多くてもセリフ七つぐらいの役だったと思います。いちばん最初は同期3人で一つのセリフを日替わりで言ってました。無名塾は180センチ以上でロートーンの太い声を出すイイ男がそろっているので、僕みたいなタイプは通用しなかったです。

林:「無名塾」をやめたあと、仲代さんとお会いしてお話ししたことはあるんですか。

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