タックルながい。(撮影/中西正男)
タックルながい。(撮影/中西正男)

 何より大切なことはお客さんが喜んでくださること。そのためにはこちらが「これや!」と思うことをフルスイングでやる。一切手を抜かない。その言葉通り、島木師匠ご自身がいつも120%でやってらっしゃいましたし、全ての舞台でそれを貫いてらっしゃいました。その言葉がいま一度自分の中で響きました。

 島木師匠のキャラクターで初めて舞台に立ったのが3月。大阪・岸和田での公演でした。島木師匠が実際に着てらっしゃった衣装で出ていくと、客席がザワザワしてるのが分かるんです。「え、島木譲二って亡くなったんじゃなかった?」と。

 そこをすぐに察知して寛平師匠らが島木師匠の弟分という説明を付け加えてくださって、そこからパチパチパンチやポコポコヘッドの流れを作ってくださいました。すると「こんなにウケるものか……」と驚くくらいウケたんです。

 これまで20年近くやってきたウケとは全く違う。もちろんそれは島木師匠の力です。島木譲二という存在を皆さんが知っているからこその笑いです。その財産を僕が使わせてもらっているから起こった笑いです。その夜、寛平師匠から「今日の感覚を覚えておきや」と本当にやさしいお電話もいただきました。

 島木師匠が現役の頃は“島木タイム”というか、おなじみのムーブが続く時間が公演中に必ずありました。昔の劇場はお客さんが舞台の写真を撮ってもよかったんですけど、カメラのシャッター音が一番響くのがその島木タイムでした。

 なんというのか、僕なんかが恩返しなんて言葉を使うのもおこがましいことです。でも、もし、何かしらあるんやったら、島木タイムの盛り上がりに少しでも近づく。それが唯一僕にできる恩返しみたいなものだろうなと思っています。

 あとね、島木師匠と言えば、見た目もごっつくて、その怖い風体がもうフリになっていた。だから、自分もパチパチパンチとか体を出すギャグをさせてもらう以上、体の迫力もないといけないと思い、久々にトレーニングも始めたんです。

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