写真はイメージ(GettyImages)
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 2022年6月12日時点での新型コロナウイルス感染症の陽性数は、人口100万人あたり119.66件であり、第6波もようやく落ち着いたような印象です。外来でも、1日あたりの検査数も10件から15件と減っており、陽性が出ないという日も増えてきています。そんな状況下での、突然認めた味覚異常と強い倦怠感だったので、「万一コロナだったらどうしよう……」と思い、コロナの迅速抗原検査を実施したのでした。

 結果的にコロナは陰性でしたが、採血から「亜鉛欠乏症」であることがわかり、その日から、食生活の改善とともに、亜鉛の補充を始めました。一人暮らしを始めた大学生の頃からだったと思います。「亜鉛が不足しないように、ホタテや牡蠣を食べなさいよ」と母にはよく言われていたのですが、「まさか、亜鉛なんか不足しないよ」なんて高を括っていたら、本当に亜鉛不足に陥ってしまったのですから、母の偉大さを感じずにはいられませんでした。

 亜鉛欠乏症とは、ヒトの必須微量元素の一つである亜鉛が欠乏することにより発症する疾患です。亜鉛は、タンパク質や脂質、核酸の代謝や遺伝子の転写に広く関与に広く関与し、生殖、免疫機能、創傷修復など広範囲な役割を担っています。そのため、亜鉛が欠乏すると、味覚異常や肌荒れ、脱毛、免疫力の低下、男性の性腺機能低下、成長遅延、食欲不振など様々な症状をきたすことが報告されています。

 世界人口の約17%が、亜鉛の摂取不足に陥っていると推定されており、低所得国と中所得国の国では亜鉛欠乏症の有病率が20%以上を記録している国も多く、大きな健康問題の一つになっています。一方、高所得国の一部でも、亜鉛欠乏症の有病率が10%に達する可能性が指摘されており、特に菜食を中心とした食生活や肉の摂取量の不足は、亜鉛欠乏につながることがわかっています。

 亜鉛が欠乏する要因は、摂取量の不足、吸収不良(クローン病など)、需要の増加(妊娠や授乳など)、過度な損失(火傷や溶血、下痢など)の大きく4つが考えられています。胃腸疾患や糖尿病、肝疾患や感染症の存在と、亜鉛の摂取量の不足や吸収障害が組み合わさって、亜鉛欠乏をきたしている例も報告されています。亜鉛は、肉、魚、豆類、ナッツ、牡蠣など様々な食品に含まれており、特に野菜を中心とした食生活や肉の摂取量の不足は、亜鉛欠乏をきたしやすいことが知られています。

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なぜ亜鉛が欠乏してしまったのか