性別を変更すると決めてから性別が変わるまで約4カ月。「二男」と記されたAさんの戸籍を見ていると、ふつふつと怒りが湧き上がってくる。Aさんの戸籍上の性別を変えるための闘いだったが、結局、私たちは何に振り回されているのだろう。長男、長女、二男、二女……男の名字で「代々」語られる「イエ」というものを体現する戸籍。個である前に「イエ」を強いる戸籍制度は、私たちが思っている以上に、この社会の価値観に深々と根を下ろしているのかもしれない。私たちの性や生が、戸籍制度に支配されていることを、女の身体で生きていると強烈に突きつけられるような思いになるが、いったい誰にとって戸籍は必要なのだろう。IDとして使えないアナログの古い制度、プライバシーがダダ漏れの、イエの記録。なぜこの国は戸籍を手放さないのだろう。

 リアルな身体を引き受けながら、自らのセクシュアリティーを、尊厳を奪われずに生きられる自由が、私は欲しい。だからこそ個であることを奪おうとする正体を、知りたいと思う。女性やセクシュアルマイノリティーを差別する者たちの顔を直視し、見誤らないためにも。

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