役所:おすがと一緒にいる時の継之助は軽妙で洒脱(しゃだつ)。でも、外に出たら人を気力で圧倒して説得していかねばならない。演じるにあたっては、このギャップがあればあるほど、継之助らしくなるのではないかと思いました。
ただ、今回セリフが長くて膨大。ほとんどスピーチみたいでしたからこれは本当に苦労しました。名言集みたいなセリフなので、言葉を丁寧に伝えなければと懸命でした。
──俳優にとって時代劇の魅力とは何だろうか。
役所:扮装をはじめ日常生活からして今の自分とは全然違うので、役に近づきやすい。椅子の生活でもないし動きも違う。その分、時代劇の所作は難しいのでしょうが、その時代に生きていた人はもういません。ある意味、想像力を駆使して自由に役を作れる面白さがあるのではないでしょうか。
松:私もその時代に生きている人はいないということが面白さの一つだと思います。所作や決まり事があるようでも、みんなが知らないから想像できる。ありえないかもしれないけれど勇気さえ出せば挑戦できる。そういう楽しみ方ができます。役所さんと共演させていただいて光栄でした。
役所:僕は松さんのデビューの時以来のファンですからね、共演はうれしかったです。今度はもっと長く一緒にキャメラに収まりたいです(笑)。
(聞き手/坂口さゆり)
※週刊朝日 2022年6月24日号