一見するとフケのようにも見えるアタマジラミ(山口さやか医師提供)
一見するとフケのようにも見えるアタマジラミ(山口さやか医師提供)

「市販の薬が効かないタイプだと、すきぐしで物理的に取り除くように指導するしか治療方法がありません。数が少ない段階で、毎日15分ほどすきぐしで虫や卵を除去することができれば駆除も可能ですが、例えば子どもが複数いたり、ひとり親で時間的な余裕がなかったりすると、完全に駆除できず家庭内でうつし合ってしまうなど、長期化してさらに対処が難しくなります」(山口医師)

 父親の悩みはそれだけではなかった。

 姉妹が通う小学校では教師が自宅を訪ねて市販の薬剤を試すなど手を尽くしてはいたが、修学旅行や部活動の遠征ではほかの生徒とは別の部屋で宿泊することになったという。

「シラミは出席停止が必要な伝染病ではありませんが、遊んでいるときや寝ているときに頭と頭がくっつくなどの接触でうつってしまうので、学校としては特別扱いせざるを得なかったのかもしれません。しかし、頭に虫がいるという状態は大人が思っている以上に子どもたちのストレスになります。アタマジラミは誰もがうつる可能性のある病気で、不潔だから感染するということはありません。成虫がプールの水に落ちることもほとんどなく、水を介してうつることもない。別の病気を媒介することもありません。いじめなどの問題に発展しないよう大人が冷静に対応する必要があります」(山口医師)

 主な感染ルートは頭同士の接触のほか、ヘアブラシや帽子の共用など。短い髪はシラミにとってすみづらい環境にはなるが、こまめにチェックする以外の予防法はない。感染者の中心は集団生活を送る未就学児から小学生までの女の子で、「プールの前に学校や家庭で調べて見つかるケースが多い」という。

 抵抗性遺伝子を持つシラミに感染してしまった場合の治療法はないのだろうか。

 2017年から、同大学はアース製薬と共同で抵抗性のシラミに効く薬剤の臨床試験を実施。冒頭の姉妹も抵抗性遺伝子を持つシラミを駆除することができた。昨年8月には「アース シラミとりローション」(150mL、税込み3850円)が全国で発売された。

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15年以上前から構想「たかが虫なのに」