言葉を超えて理解する
是枝監督が感じた4人の魅力とは何だったのか。
「ガンホさんは国民的俳優ですが、どんな作品でも感じる、ある種の軽快さ、軽やかさ。陰陽でいうと陽をまとっているのが一番の魅力です。例えるのは難しいけど、勝新太郎とフランキー堺、渥美清を合わせたような、そんなニュアンスを全部持ち合わせている。運動神経も非常にいいんですよ。ドンウォンさんは、何かが断ち切られている根無し草といった感じが好き。彼の背中にはその哀愁みたいなものが感じられる(笑)」
「空気人形」(09年)でタッグを組んだペ・ドゥナは、セリフの間と身体的な動きのニュアンスが絶妙で、「改めてすごいと思わされた」と言う。
「タイプ的には安藤サクラさんに近い。スイッチが入った瞬間に空気が一変します。イ・ジウンさんは(歌手IUとして活躍するだけに)ハスキーボイス。何より声の表現力が素晴らしかった。期待以上でした」
前作「真実」に続き海外映画を手がけた是枝監督だが、「まだ自分に伸びしろがあると思えた」と話す。
「今回『言葉を超えて理解しうるものがある』ということをより強く感じました。言葉でないものにアンテナを張って現場を見る、という作業を通して、まだ自分は成長するぞと思えた。韓国から日本に戻って配信ドラマの演出をした時にそう感じました。セリフを聞きながら、それ以外のものに目が行く瞬間ができた。現場で見えていたものが、韓国へ行く前よりも増えたと思います」(一部敬称略)
(フリーランス記者/坂口さゆり)
※AERA 2022年6月27日号