ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が6月12日の「ロシアの日」に演説した。注目されたのは、18世紀のピョートル大帝の名前を出したことだった。 AERA 2022年6月27日号の記事から紹介する。
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6月12日の「ロシアの日」は、プーチン大統領にとって素直に祝う気持ちになれない祝日かもしれない。
祝日の由来は比較的最近で、1990年のことだ。6月12日、当時ソ連を構成する共和国の一つだったロシアが、国家主権を宣言した。問題はこの宣言が、ソ連が崩壊に向かう大きなきっかけとなったことだ。
宣言の背景となったのは、ソ連を率いるゴルバチョフ氏と、ロシアを足場に台頭したエリツィン氏の権力闘争だ。だが地理的にも歴史的にも政治的にもソ連の心臓部を占めるロシアが分離独立志向を鮮明にしたことで、他の共和国にも同様の動きが雪崩のように広がった。ウクライナも7月に、主権宣言に踏み切った。
ソ連の崩壊を「悲劇」と呼び、ウクライナを再び支配下に置こうとするプーチン氏としては、とても賛美することができない歴史だろう。
戦闘には直接言及せず
今年のロシアの日に行った演説で、プーチン氏はウクライナで続く戦闘には直接言及しなかった。内外で主に報じられたのは「祖国と社会のために、人々が団結していることが重要だ」という、国民に結束を呼びかけたくだりだった。
だが私が注目したのは、それに続く部分だ。プーチン氏は、ロシアの日とは縁もゆかりもない、18世紀の皇帝の名前を引き合いに出したのだ。
「ピョートル大帝と彼が進めた改革については、今も論争が続いている。しかし、彼の統治下でロシアが強力で偉大な、世界的大国の座を占めたことは認めざるを得ないだろう。彼の強力な個性、決めたことをやり遂げる際に発揮した恐れを知らぬ姿勢と粘り強さに対して、我々は今も敬意を抱く」
ピョートル大帝をお手本に、ロシアを世界的な大国とする。そのためにも、ウクライナで始めた軍事作戦はどんな困難があっても最後まで貫徹するという、決意表明とも言えるような言葉だった。