『FOXスポーツラジオ』に出演したロブ・パーカー記者は「早く大谷をトレードに出すべきだ」と主張した。同氏はエンゼルスの投手力の弱さを指摘し、「トラウトとレンドンに高額年俸を払うなら、投手陣を整備すべきだ」と話し、その資金を確保するために「大谷を出すべきだ」と述べた。司会のクリス・ブルサード氏からは「(その意見は)クレイジーだ」と反論を受けたが、パーカー記者のような考えは広まりつつある。

 大谷は25日現在、投手で6勝(チーム内1位タイ)、防御率2.90(同2位)、打者で16本塁打(同2位)、47打点(同1位)の成績を残している。エンゼルスにとってはプレーオフ進出に欠かせない存在である一方、「トレードの弾」としてはこれ以上にない逸材でもある。確かに契約交渉は難航はしているが、エンゼルスは契約延長を望んでおり、そう簡単に大谷を手放すとは思えない。しかし、それでも何が起こるかわからないのがMLBだ。

 2012年7月23日に、イチロー氏が11年半所属したマリナーズからヤンキースにトレード移籍したことを覚えているだろうか。その年、マリナーズとの5年契約の最終年のイチロー氏は、球団から開幕前から何度も契約更新を打診されていた。しかし、「今シーズン終了後まで待ってほしい」と態度を保留。そして、7月にヤンキースに移籍した。移籍発表の記者会見でイチロー氏は。「僕自身も環境を変えて刺激を求めたいという強い思いが芽生えてきた」と、自ら移籍を志願したことを明かしている。

 大谷についてはどうか。大谷はエンゼルスから非公式ながら開幕前から契約延長を打診されている。しかし、「(2年契約が終わるまで)延長について話し合いたくない」と話しており、積極的な話し合いは行われていない。また昨年から「勝ちたい」と公言もしている。これらは、自ら他球団に移籍を志願した当時のイチロー氏の状況や心境とあまりにも重なる部分が多い。

『ジ・アスレチック』で記事を執筆したケン・ローゼンタール記者も『FOXスポーツ』の番組で、「(エンゼルスが契約できるかは)大谷がチームに残りたいかどうかということも出てきます」と指摘。同記者は、大谷の「勝ちたい」という発言に触れ、「(再契約するには)エンゼルスがプレーオフに進出することが必須。そうすれば、エンゼルスは大谷に『このチームなら長期的に試合に勝つ力がある』と示すことができる」と話した。

 現地メディアが報じる、大谷がFA前に移籍あるいはトレードで出るという話は、あくまで推測の域を出ない。しかし、少なくとも大谷にはプレーオフに行きたいという望みがある。つまり、大谷の去就は、エンゼルスが今季プレーオフに進出するかどうかで決まるのかもしれない。はたして、今後の大谷はどうなっていくのか、引き続きその動向に注目していきたい。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)

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