みなさんは文章を書く際に、自分の感情にしっくり来る言葉が思い浮かばず、もどかしく感じたことはないでしょうか。
こうしたお悩みに役立ちそうなのが『感情ことば選び辞典』。人間の感情や特性を表現するのに用いるキーワード約200語を五十音順に並べ、各ことばの類語や言い換え表現を掲載した一冊です。
たとえば、「嬉しい」を別のことばで表したいときはどうでしょうか。この辞典で「嬉しい」のページを見てみると、約30の類語が掲載されています。嬉しい知らせを聞いて機嫌が良くなったときは「上機嫌」、羽目を外すほどの嬉しさであれば「狂喜」、得意さがきわまって夢中になっているようなら「有頂天」。どのような状況なのかで、使い分けることが可能です。
これらの類語にはすべて簡単な語義と例文も書かれているので、細かなニュアンスまで把握でき、使い方を間違う心配もなさそう。たとえば「歓喜」と「狂喜」は似ているように感じますが、語義を見ると「狂喜」のほうがさらに喜びの度合いが高いことがわかるかと思います。また、「ハッピー」や「ラッキー」といったことばを使うのもひとつの手。カタカナはスタイリッシュにしたいときに効果的です。このほか、「心が弾む」「胸がときめく」のように慣用句で表すのもありですし、「うきうき」「わくわく」のようにオノマトペを使うと臨場感がぐっと引き立ちます。
「嬉しい」ひとつをとっても、これだけさまざまな表現の仕方があることに驚くとともに、日本語の豊かさに改めて気づかされますね。
さらに巻末には、同書のキーワードと収録語を網羅した索引(インデックス)が掲載されています。たとえば本を読んでいてよくわからないことばが出てきたとき、この索引に記されているページを開くと、そのことばにぴったりな感情を表すことばが記されています。たとえば「ムーディー」であれば「気持ち」、「歯が立たない」であれば「負ける」など。あることばの言い換えをピンポイントで知りたいとき逆引きするのに便利です。
「辞典」といっても、同書は薄くて軽く、手帳のようなハンディサイズ。身の回りに置いていても場所をとりませんし、持ち歩きするのも簡単です。その分というべきか、文字はかなり小さめなので、老眼の方などは、文字が大きくスマホサイズの『大きな字の感情ことば選び辞典』のほうをお勧めします。また、電子書籍版も出ているので、そちらを活用するのも便利でしょう。
文章を書くことを専門にしていなくても、手紙や感想文、要望書など自身の気持ちを伝えなくてはいけない場面は多いもの。いざというときに慌てぬよう、みなさんも同書を手元に置いてみてはいかがでしょう。自然と語彙力が鍛えられるとともに、「自分の思いを伝えることばが見つからない」という歯がゆさが今までよりも減るはずです。
[文・鷺ノ宮やよい]