先入観を捨ててウクライナ危機を見よ
2022年3月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会で演説した。戦争中の国の大統領がオンラインで他国の国民や政治家に語りかけるのは、いかにも21世紀のテレビ俳優らしい振る舞いだと思う。演説の内容は地味だったが、日本に彼のシンパは増えたのではないだろうか。
ただし、目の前で起きていることだけで、世界情勢は理解できない。日本人は「アメリカ脳」の見方になりやすいから、「ロシア脳」に頭を切り替えて情勢を判断することが重要だ。プーチンとロシア軍は、ウクライナの街を攻撃し、非戦闘員の命を奪い、シリア型のひどい破壊行為を続けた。これは許されることではないが、プーチンがなぜキレているのかを理解するには「プーチン脳」で考えてみるしかない。
時間軸の問題もある。この1カ月余りで世界の見方は急変した。最も大きく変わったのは、ゼレンスキー大統領に対する見方だろう。「彼は大統領になる器ではない」と考えていたウクライナ人もいるはずだ。ゼレンスキーは政治風刺ドラマ『国民の僕』でウクライナ大統領役を演じて人気を高め、2019年の大統領選に出馬して当選した。