これが投票日の前日だ。

 そして投票日当日、東京新聞に宗教団体の広報担当者のコメントがあるのに気がついた。「(母親が)長年信者として活動しているのは間違いない」とあるではないか。そうなるとなぜその宗教団体を実名で報道しないのか、ということになる。

 供述はあくまで警察の間接的な情報だ。それを独自取材で確認したのだから実名で報道してもいいではないか。

 ここにいたって、なぜ宗教団体の名前を出さないのか、この記事を配信した共同通信の統合編集本部長に確認してみた。すると、確かに、その宗教団体は、母親が信者であることは認めたが、多額の寄付をしたことについては、「確認がとれない」とし、また「安倍元首相と関係があると思って」という供述の部分については、安倍元首相がビデオメッセージを関連団体によせた、という昨年の赤旗の報道は承知しているが、安倍元首相との関係については「コメントできない」とのことだったという。「その結果をうけて社内で協議をした結果、宗教団体の名前は出さないことにした」(共同通信)

 結局、講談社のウェブメディア「現代ビジネス」が旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の名前を出して報道したことで、教会側が、雑誌、ウェブメディアを排除して会長の会見を行い、「統一教会」の名前はようやくテレビ・新聞でも報道されるようになった。

 統一教会は2007年以降、関連会社の特定商取引法・薬事法違反による刑事摘発があいつぎ、東京地裁の判決(2009年11月10日)で「統一教会への信者を増やすことをも目的として違法な手段を伴う印鑑販売を行っていた」と断ぜられている。

 統一教会側は記者会見で、コンプライアンス遵守の「声明」が2009年に出されて以降は、こうしたトラブルはない、献金も収入の10分の1は奨励しているが、無理をしていることはないと主張した。

 が、翌日、「全国霊感商法対策弁護士連絡会」が記者会見し、旧統一教会による献金の被害はいまだに続いていることを、元女性信者が、2012~15年に行った献金の返還を求めた訴訟などをあげながら指摘した。たしかに判決文を確認すると「不安をあおられたり、多額の献金をさせられたりするなどして、精神的苦痛を受けたものと認められる」と裁判所が事実認定し、476万500円の損害金の支払いが命じられていることがわかる。

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